上野の駅そば

上野駅上野東京ラインが開通するまでは、ここが宇都宮・高崎・常磐の3線の終点でした。全ての列車は上野止まりで、多くの人はここから京浜東北線か山手線で東京駅へ行って、そこからまた東海道線に乗っていました。

今でも上野止まりの列車はありますが、列車が全乗客を吐き出すと優に1000人を超える乗り換え暴徒がホームに放たれます。暴徒の進軍に巻き込まれたくない私はしばしば、ホームのお蕎麦屋さんへ逃げ込んでいました。

いつも行っていたのは7・8番線のホームにある「爽亭」という読み方の分からないお蕎麦屋さんで、そこの「乗せ放題そば」みたいなやつばかり頼んでいました。かき揚げ、ゴボウ天、春菊天、揚げ玉、油揚げ、ワカメ、生卵の7つから乗せたいものを全部乗せて、当時確か450円くらい。お気に入りは揚げ玉以外の6種乗せで、丼の中の麺が見えていなかったのを覚えています。大盛りでも600円はしなかったこのありがた麺は大学3年生の途中で提供を終了してしまいましたが、今でも思い出の味の一つです。

ここのお蕎麦屋さんにはもう一つ思い出があります。大学に入った2013年の冬、食事会の前に小腹が空いていたのでかけ蕎麦を頼んだところ、オバちゃんが気を利かせてかき揚げを乗せてくれたのです。若いのがネギとつゆだけのお蕎麦を食べているところに何か思うところがあったのでしょうか。純粋な優しさを感じました。

その後いつ頃だったか、あのオバちゃんも見かけなくなってしまいましたがあのかき揚げはよく覚えています。その後の食事会でお腹がはちきれそうになったので。